司会
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本日はISO審査の実態に詳しい方々にお集まりいただき、日本のISO審査の現状と問題点、企業側が審査登録機関を選ぶ際のポイント、審査での対応などについてお話いただきたいと思います。現在、ISOの審査機関が品質が41件、環境が33件ということですが、この数自体は多いのでしょうか、少ないのでしょうか? 奥城さんは日本適合性認定協会(JAB)の立ち上げに携わった立場から、この点どのようにお考えですか。
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奥城
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JABを立ち上げの原点は、92年6月に日本工業標準調査会(JISC)が当時の通産大臣及び運輸大臣の諮問に対し、「日本の審査登録制度に対するあり方」という答申を出したことでした。その答申をベースに、経団連(現・日本経団連)を中心とした民間ベースの認定機関をつくろという流れになったわけです。人も金も一銭も政府からはもらわず、基本基金及び運営基金も、趣旨に賛同する主要な34団体(当時)が拠出したわけです。
当時は日本ではつくらなくてもいいんじゃないかという意見も結構ありましたが、最終的にお金を出してでもやろうということになったのは、日本はTQC大国でいい品質のモノをつくってきて、世界でもリードしているのだから、それを生かさない手はないという考えからでした。
審査登録機関の数がどこまでいくかのおおまかな予測は、最初の3年目ぐらいで20機関ぐらい、5年目で35機関ぐらいを想定していました。
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司会
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ここまで審査登録機関が増えてきたということはISOの審査というのも、れっきとしたビジネスとして成り立つということになるのでしょうが、そのへんをどのようにお考えですか。
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長谷川
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今までは確かに儲かっていたと思います。今、日本でもかなりの勢いでISOの認証登録件数が増えていますが、受審側もだんだん利口になってきて、賢く選んでいるような気がします。ISOを取得してから何年か経ち、何遍も審査を受けてくると、「うちがお願いしている審査登録機関はちょっとおかしいのでは?」などの疑問が出て来るのは当然です。ですから、JAB認定のところだけでも50近くの審査登録機関が存在する状態になると、いいかげんな審査をやっているところは必然的に淘汰されていくでしょう。 |
沖本
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私は今の日本の状況から考えて、審査機関は多すぎると考えています。私は日本の審査登録機関の特徴の1つとして挙げたいのは、“業界ひもつき”的な審査登録機関が多いということです。
日本のISO9000の認証登録件数が約3万ですが、英国は7万、米国も4万ぐらいあります。その英米の審査登録機関の数はいずれも60件ぐらいですから、日本に審査登録機関が41もあるというのは3万という数から考えると、異常なくらい多い。その原因は業界ひもつき審査機関の存在です。
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奥城
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“業界ひもつき”的な審査登録機関が多いのは、やむを得ないと思いますが、審査登録機関自身もその業界内の企業だけを審査するというのではなく、審査の技術なりノウハウをベースにして、他の業種にも積極的にアプローチしてほしいというのがJAB設立当初の思いでした。ただ、沖本さんのご指摘のとおり、業界囲い込みの傾向は強いという点に関しては、若干懸念しています。
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司会
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審査登録機関を選ぶ企業側の立場で、審査登録機関の現状をどのようにお考えですか。
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石橋
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審査登録機関の数が増えてきて、価格的にもリーズナブルになってきていることは中小企業にとっては非常にいいことだと思いますが半面、審査登録機関が利益を上げるために、必要な審査員教育もせず、仕事をとってきて審査員へ仕事を割り振るという管理業務だけ行っているケースがあることを心配しています。こういう形にすれば、コスト的には下げることは可能でしょうし、利益も上がるでしょう。しかし、果たしてそれでいいのかというと疑問です。
当社の場合、ISOのシステムを自社をどんどんスキルアップさせる手段として使っていますので、良い審査員にこちらが「なるほど!」と思わされるような指摘をしてもらって、社内改善をどんどん進めていくということで考えていくと、杓子定規でつまらない指摘ばかりされるのでは、ISO本来の意味はなくなってしまうと思います。
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荒川
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審査を受ける立場でいうと、一番気になるのは、やはりコストです。当社がISOを取得した際、気になったのはそこですし、今、コンサルをしているお客様に審査登録機関選びについて相談を受けた時に、二通りご説明します。
まず、コスト的には高いかもしれないけれども、ある程度しっかり審査をやって、質もそれほどバラツキがなく、ISO業界の内外からそれなりの評価を受けているところ、あと多少、審査の中味には不安があるにしても、経営者が希望するようなコスト的に安くところ、この二通りの条件にかなう審査登録機関をいくつか紹介して、その中から選んでもらうというやり方をとっています。
顧客の立場からいうと、審査登録機関の選び方というのは非常に難しいのです。皆さん、出版物、インターネット、周囲の口コミなどから情報を得ていると思いますが、これらは一方的な情報ですよね。これらの情報から審査登録機関を評価しようとしても、本当のところはよく分からない。ですから常々思っているのですが、審査登録機関選びの指標みたいなものが欲しい。そうでないと、どうしてもセールストークだけが踊るようなところが受注しやすい状況が出てきてしまうのではないでしょうか。
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司会
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審査登録機関選びの最大のポイントがコストであることは論を待たないわけですが、そのほかに受審側が審査登録機関選びで留意しなければならない点として、どんな事柄があるでしょうか。
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長谷川
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審査機関は仕組みとして動かしているんであって、実際に審査するのは審査員なんですよ。私はJABの認定審査員をやっていますが、審査登録機関がJABやUKAS(英国)の認定をもらったというのは、仕組みとしては審査員の質も含めて一応のレベルは達成されているということがいえると思います。
それでそこの中身は、企業に行く審査員の質なんです。大きな審査機関は、もう何百人も審査員がいて、早い話が素晴らしい人からそうでない人までいろいろいるのです。ですから審査登録機関を選ぶと必ず審査計画書が来るわけですが、その時に審査員の方の専門性とか、審査実績とかをきっちり見ていただきたい。
それから、業界のことを知っている人が来るといろいろ指摘されるだろうから、知らない人が来た方がいいと言う人が時々いますが、それは逆です。やはり、その業界のことをよく知っている人の方が、先ほど石橋さんが言ったみたいな、いわゆる付加価値のある審査をしてもらえる。
お金を払うのは受審側ですから、審査員の人となりをしっかり見て、気に入らない場合は他の人への交代を要求するなどの行動をしないと、結局、質の悪い審査員がはびこるというようなことになってしまうと思うんです。
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沖本
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コンサルタントの立場で、受審側から審査登録機関についての相談を受けた場合、4〜5つピックアップする時に、必ず1つは外資系を入れるようにしています。なぜかというと、最近の外資系の審査登録機関というのは、けっこうしっかりとやられるところが多い。例えば、審査員の教育に関しても日本の審査登録機関でもやっていないということまできちんとやっているといいます。もっとも、そういうところはコスト的には高い方の部類に入るようですが・・・。
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荒川
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私も外資系の審査登録機関は評価しています。中には荒っぽい商売をしているところもあることは事実ですが、概して名門といわれるところの系列ですと、審査員の評価スキームをきちっと持っていますので、レベルは高いと思います。また、われわれがクレームを出した場合、的確にレスポンスが返ってきます。
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石橋
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当社の審査登録機関も外資系ですが、当社がそこを選ぶ際も5社ほど相見積りを取りました。そこで絞り込んだ中で、専門性のある方がどの程度いるかという観点から検討して、今のところに決めました。その後も維持審査などでお付き合いしてきて、その対応には満足しています。
どういう点に満足しているかといいますと、審査が終わった後のフォローがしっかりしていることです。例えば、審査後にアンケートが来て、当該審査員はどういう状況でどんな審査をしたかといったことなどを、アンケートで確実にフォローしてくる。審査登録機関がどうやって審査員一人ひとりを管理していくかという明確な姿勢が、われわれ顧客側にも見えるんです。
実際、当社にやってくる審査員も質の高い、いい指摘をしてくれる審査員で、非常にいい方向に動いていると思います。一番重要なのは、審査員が自社の業種に精通している方、また、中身を理解しようとして、聞く耳を持ち、この会社はこういうことをやっているんだなということを理解して、それに応じて審査の指摘の内容がかなり変わってくると思います。そこまで考えて、しっかりした審査をしてくれる人を抱えている審査登録機関を選ぶべきです。
もっとも、それは結果論であって実際、審査員がわれわれが望む条件に適った方を見つけるのは非常に難しい。そうすると、JABかどこかがこの審査登録機関はおかしいと思えば、そこをコントロールをしてくれるような形になっていけば、受ける立場としては非常にやりやすいという気がします。
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奥城
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最近、国際的に非常に話題になっているのが世界各国に拠点を置いている審査登録機関の拠点管理がいいところと悪いところがあることです。これは日本の例ではありませんが、海外拠点の管理がきちんと行われていないある審査登録機関で完全に営業政策に走ってしまった結果、形だけ審査をして、登録書を出したという例が最近摘発されました。本国が海外拠点をきちんとチェックしているかどうかも注意してみていく必要があるでしょう。
私は各審査登録機関はもう少し自分たちの業績を公表すべきだろうと思うんです。例えば、審査登録機関の立場として、自分たちの品質目標を全部公表して、その結果を含めて自分たちの業績レポートを出すような形に持っていければいい。それがあれば、受審側が審査登録機関を選ぶ際の1つの参考にもなるのではないかと思います。
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司会
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顧客の立場から見て、審査登録機関が顧客満足というか、顧客重視を意識してやられている姿勢は感じられますか。
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石橋
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私の場合はYesですね。ただ、逆に言えば、まだ審査登録機関が決まっていない段階で考えると、審査機関の商品は間違いなく審査員だと思います。審査登録機関はもっと、自分のところの審査員はどういう経験を積んできて、どういう業種の人間だということをもっとアピールしていただきたいですね。
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荒川
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審査登録機関側のアピール材料として、よく登録件数やどういった業種に強いかなどのデータを出したりしていますが、これから中小・零細企業の取得例が増えてくれば、件数というのは実態をそんなに反映しなくなる。ならば、認証を取った前後の成長性をトータルに見て、その結果を売り物にしてもらいたいと思います。でないと、審査登録機関の売り物が審査員の数とか、今までの歴史とか、登録件数だけですと、受審側は判断のしようがないのです。
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沖本
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そういう意味では審査のやり方について、受審側の方から、本当はJABなどに“提訴”するということもやっていっていいのではないでしょうか。そういう方法が決められているにしても、あまり活発に行われてないのではないかと思うんです。審査側、受審側双方のためにも、もっとどんどん意見を言えばいい。
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長谷川
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なかなか日本人の習性として実名ではクレームは来ないでしょうね。実際の審査の時、いろいろ問題が起こった場合、管理責任者の方から苦情が出て来るわけですよ。それを経営者が止めるという事例が非常に多いんです。せっかくそういう制度もあるんだから、それを活用するという風土をつくっていかなければいけないでしょう。
私どもが審査登録機関の審査におじゃまする時に、受審側からどういう苦情がありましたかと質問したら、ほとんどの場合、苦情を記録されているところはないんです。外国の場合は結構あるんですが・・・。
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司会
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クレームの話からは、ずれるかもしれませんが、審査員をどう呼ぶかということについて、社内で喧喧諤諤の議論になったという話があります。「先生」、「審査員」、「さん」づけなどいろいろ意見が出たといいますが、「先生」と呼んでいて、企業と審査員が本当に対等な立場といえるのでしょうか。
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長谷川
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先生と呼ばれないと気分が悪くするような審査員までいるとか(笑)。実際、「先生と呼んでくれるな」と言っておきながら先生と呼びかけると振り向いている人がいっぱいいますよ。
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石橋
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当然、私は先生という呼び方はしませんが、考え方の中にどうしても対等の立場で審査員の方に物を申しますよと言いながら、審査を受ける立場ということからすると、まったく対等かというとそれは違うという気もしています。日本全体としては、先生と呼んでおいたほうが無難という風潮が間違いなくあるのではないでしょうか。
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司会
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私どもも審査員の方とお話している時に、審査の最中に、口の先まで「ここはこう直したらいいですよ・・・」みたいな言葉が出かかるんだけど、立場上言えないんだよね・・・という話を聞くんですが、実際困る場面もあるんでしょうか。
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奥城
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審査員とコンサルが一般論としては違うというのはよく言われていることです。しかし、実態として企業の立場からよく聞くのは、審査で効果はどうかという、例えば、品質システムの構築に役立たせるとか、効果を出させるとかというのは、これは審査員の役割ではないんです。だから、自分たちだけではできずに、外の知恵を学びたい時に、コンサルを使うわけです。間違っていけないのは、審査というのは企業の立場でやるのではなくて、本来は購入者の立場でやるということなんですね。
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沖本
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私は主任審査員の教育に携わっているんですが、その人たちに、われわれの“お客様”は誰かというのをまず最初に考えろと言っています。それは不特定多数の購入者というのが本当はお客様ですよね。その人の代わりに審査をするわけです。ですから審査員の場合、お客さんが三方にいるんです。直接、審査に行った時に対応する受審側の人は、お客さんですが、これはあまり気にするなと私はよく言うんです。
先ほど石橋さんが言われたように、つまらない指摘でなく、受審側が「あ、気がつかなかった」と思うようなことを指摘事項として置いていく方がいいというふうな議論を常々しているのです。だから、審査員資格の合格証を取った後の訓練が大事ですよね。
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司会
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2000年版の審査の時の一つの問題点として、審査員の質という形で絡んでくるのかもしれませんが、審査員が2000年版を理解していないというケースが散見されるようですが…。
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長谷川
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ご存じのように、2000年版への移行がどんどん進んでいていますが、例えば、“プロセスアプローチ”のところで審査員もまた受審側も今一つ理解が進んでいないきらいがあります。
旧版(94年版)は、いわゆる規格要素型というのか、規格要素だけを審査していればよかった。ところが、2000年版では自分たちの会社の業務のプロセスを確実にしなさいと言っているわけですよね。しかも、そのやり方はその企業が決めればいいことになっているのですが、その点を審査側も受審側もきちんと理解できていない。相変わらず逐条型というのか、一つひとつ文書で押さえていこう、紙を証拠としてやっていこうというよう審査の形態からまだ抜けきっていない。特に、94年版で何百回も審査を行ったというベテラン審査員ほど、そのくせが抜け切れていません。
「プロセスアプローチ」の審査というのは本質的には、審査する会社のプロセスというのをまず理解しないといけません。理解するといっても、それなりの専門性や知識を持ってないと理解できませんから、それをベースにして、それと会社としてコントロールする品質マネジメントシステム(QMS)が本当に適切かどうかを見なければならない。製品品質の保証を見ているだけでは済まないのです。そうすると、2000年版の審査を適切な形でやるとなると、TQMを管理職レベルでかなり経験した人でないと、なかなか難しいのではないかと思いますね。
だから、いろいろバラツキが出てきていると思のです。これから徐々に、今年から来年にかけてどんどん2000年版が進んでいきますから、そういったことで企業側もうんと勉強しないといけないし、2000年版はきちんとやれば、自分の会社がよくなるものなのです。だから、そこを考えて、“やらされるISO”ではなく、自分たちの会社はこうやっているから、○○はISOのどこのことなんだ、というような発想をしていかないといけませんね。
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奥城
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今、長谷川さんが言われたように2000年版になって、だいぶスタンスが変わってきました。どちらかというと、忠実に規格に合わていたらよかったものから、パフォーマンスを見ていく。それもお仕着せじゃなくて、各々企業の実態に合わせて、あるいは企業の目的に合わせて、自分たちでつくったシステムでもって、有効性を見ていこうという趣旨に変わってきたわけです。それが具体的に言われているのが、「継続的改善」、あるいは顧客満足、あるいはその方法論としての「プロセスアプローチ」が出てきたわけですね。
今、長谷川さんからプロセスアプローチの話が出ましたが、審査のやり方について従来から私も非常に関心を持っていました。考え方としては、プロセスアプローチになりますと、何かのプロセスを選ぶわけですが、○○のプロセスを実行して、そのプロセスの有効性をどうやって評価していますかというような質問をしないといけないわけですね。どのプロセスを選ぶかというのもいろいろとやり方はありますが・・・。だから、手順書を見てそのとおりやっていたら、それはもう趣旨の審査にならなくなると思うんですね。
そういう意味で、どういう質問をしたらいいかということですが、「5つの質問」ということで例を挙げてみたいと思います。
1番目は「あなたは何をしようとしていますか」。これは仕事をしようとしていることがはっきりしているか。
2番目は「それをどのように実現させていますか」。何をしようかというのは方法論がないと、単なるスローガンになってしまうわけですから、これは目標を達成するシステム、プロセスがはっきりしているか。
3番目は「それが正しいことをどうやって知っていますか」。これが正しくなければ、ムダなことをやるから、効率が悪くなるわけです。
4番目は「それが実施する最良の方法であることをどうやって知っていますか」。正しいことをやっていても、今度、それが最良かどうかということが証明されていないと、これも効率が悪い、あるいはアウトプットの有効性が悪いという観点です。
そして、5番目は「それを行うのが正しいということをどうやって知っていますか」。これはある時期には正しかったかもしれないが、その環境は変わっていくわけだから、目標だってどんどん変わっていかないといけない、その状況に応じてその目標なりが妥当であるかどうかを知る、要するに目標の妥当性を見ているわけですね。
これは基本的なプロセスアプローチを使った質問のパターンです。これが例えばレベルでいけば、トップレベルのところ、マネジメントレベル、あるいは運用のレベル、というようにそれぞれレベルがありますし、それから今度、事業のプロセスごとに展開をしていけるわけです。
だから、こういう考え方は審査員だけではなく、例えば、企業の中で内部監査をやった時も全部共通した視点でやるんです。プロセスアプローチに対して、そういう考え方になってくれば、だんだん本質をついた質問になってくると思います。
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石橋
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今までのISOの話の中でも、取得する企業もベクトルが2つあって、ただ取ればいいという会社と、ISOによって企業の中を改善していきたいという、まるで正反対に近いぐらいの考えを一緒にしていかないといけない難しさというのもあろうかと思います。社内がどうやればレベルアップしていくかという考え方でやれば、2000年版は非常に有効になっていくと思いますが、いまだに2000年版でも、ただ取ればいいというところも少なくないようです。
そういう企業に対して、システムも自分の方でつくってあげますという形で、審査登録機関が子会社を使って、一緒にコンサルタントとパッケージで売り込んでくるような形があるという噂をよく聞きます。こういうやり方でやっていきますと、94年版以上に会社の中身も会社の運営方法もまったく分からない方がシステムをつくって、それにある程度合わせてやっていかないといけない、もうまったく実態がないISOになっていってしまうのではないかと危惧しています。
まだ、94年版であれば分からないなりにも、この文章とこの文章とここだけ押さえておけば、それしか審査しないという形で、ある程度パッケージ化というのも、善し悪しは別としても、できないことはないのかと思います。
ただ、なおさら実態に触れようとしている今回のシステムにおいて、そういったことが本当に成り立つかは疑問です。まったく維持審査の前につくりものを全部それに合わせてやっていくことの繰り返しになって、ISOに対する不平不満ばかりがそういう会社からは出てきて、何にも価値がないのではないかということになりかねないのでは・・・という危機感を感じます。
ある会社にとってはとってもいいシステムなのに、意味がないという声ばかりが大きくなっていっては、将来的にもつまらない話になっていってしまうのでは・・・という気がします。
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沖本 |
私も今まで何十という会社をお手伝いさせてもらいましたが、最初に社長や責任者の方とお話すると、多くの人が「この機会に会社の仕事のやり方を変えたいから、しっかり手伝ってくれ」とおっしゃるんです。それから進めて行くうちにだんだん、「とりあえず今回は認証登録に的を絞ってやろう」というふうに変わってきてしまう傾向は確かにあります。最初は認証登録ありきという考え方から次第にISOを活用して社内改革につなげるというケースもありますが、私が携わった企業に限って言うと、認証登録してから努力をするというところは案外少ないですね。
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長谷川 |
2000年版を正しく理解して、正しくやれば必ずよくなるんですよ。94年版は先ほども言ったように、規格要素型で、“やれ記録だ、何だ”と今までにないものをいっぱいつくらされて、それが付加価値のある審査は全然なかった。
2000年版を導入すれば、継続的改善で有効性を見ろと言っているわけですから、継続的に見ていかないと、要するに取った時から、1年経ち、2年経ち、3年経った時に、それが売り上げの増加や顧客評価がさらによくなったとか、そういった尺度で見て行かないと・・・。企業側も絶対そういう視点で見るべきだし、審査員もその点をもっと気にすべきだと思うんです。
だから、審査登録機関も自分の審査した企業に“お墨つき”を与えたことの責任を持つべきでしょう。「登録証をあげたから終わり」、「1年に1回か半年に1回見に行く」というのでは審査登録機関の責任も果たせないと思うんです。
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荒川 |
2000年版で「経営者に対する責任」がだいぶ重くなったとは言いながらも、審査登録機関としても、経営者へのインタビューを非常にスンナリというか、あっさりと済ましてしまうようなところもまだまだ多いですよね。こういう対応はもうちょっと何とかしていただきたい。せめて経営者に、もう少し緊張感を持たせないと、いいシステムにはならないのではないでしょうか。
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奥城 |
全体の審査、その登録制度全体の枠組みの質を上げるというのは、最低限の要求されている期待されている質をキープしなければいけないということです、そうした観点から行くと、2000年版対応が一つのきっかけになるでしょう。
こうした状況に対応して、JABが審査登録機関を審査して認定する時に、審査員のビヘイビアも見て、きちんとインプルーブメントするように有効性を見ているかということを非常に重点的に見ていこうという方針を打ち出してやっているようです。それは審査登録機関は審査登録機関で、しかるべきところはきちんと勉強して、徐々に変わっているきているともいえます。審査員の教育訓練は十分やっているとこもありますし、徐々にそういう全体の仕組みが変わりつつある、あるいは変えようとしている時期に来ています。
だから、そういう枠組みの中で考えますと、企業の立場からすると、ただ単に認証はほしいというようなところは、これからは段々と従来のやり方で取れなくなるようになってくる、あるいは取れなくしなきゃいけないような時代にだんだん向かってきている。そこのところをきちっと、もっと発信していかなければいけませんね。
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司会 |
審査登録機関とコンサルの兼営の問題について、皆さんはどうお考えになりますか。
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奥城 |
これは現実問題としていろいろ起こっていて、難しい問題も含まれていますね。まず、基本的に審査とコンサルというのは、全然目的が違うわけです。コンサルというのは要するに、お客さんがまさに企業なわけです。その企業の品質システムを構築するためにお手伝いする、アドバイスをするという立場で、お客さんが企業なわけです。
先にも話が出たように、審査登録機関は購入者に代わって審査するわけですから、審査登録機関の本当のお客様というのは、顧客、企業ではなく、製品の購入者なんです。もっとも、仕組みとしてのエンドユーザーは、購入者とは言っても、お金は企業からもらっている。そうすると、そこには本質的に利害の衝突があるわけです。
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長谷川 |
付加価値を与える審査というのは、例えば、企業に行って、企業の方たちが規格を正確に理解していなかった、正しい規格の理解を全然してないという時は、「この規格はこういうことを言ってるんですよ、こういうことを言ってるんですから、これじゃあだめなんですよ」ということは、どんどん言っていただいた方がいい。そうしないと付加価値はつかないのです。
「正しいのはこういうこと。本質はこうだ!」ということを言える審査員はプロなんですから、それはいい。われわれが見ていて、「あの人すごくよかった。いろいろ言われたけど、すごくためになった」というのは大体そういう方ですよ。
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石橋 |
ユーザーレベルで言いますと、なおさらコンサルタントと審査というのは、非常に難しい兼ね合いになってくると思うんですが・・・。ただ、審査員には第三者、当然お客様の立場でわれわれを見ていただいた方がいいんです。企業というのは、なかなか外から指摘を受けることも少ないですし、また、当然お客様の指摘で企業というのはどんどん伸びていくわけですから、よりいい指摘をどんどんしていただきたい。その会社を育てるようなつもりで、どんどんISO上おかしいことを指摘していただく。そこで止まっていれば、それが「審査」であって、「ではそれを改善するためにどういう方法でやりますよ・・・」とまで言ってくれるのがコンサルタントなのかなと私は考えています。
審査の中でどんどん指摘していただいたことというのは、その審査自体が非常に会社のためになっていくし、それで解決方法が分からない時にはコンサルタントの方にご相談すればいい。審査での指摘というのは、お客様の代わりにわれわれに良いアドバイスをくれていると解釈しています。
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荒川 |
まともなコンサルタントが指導した審査の立場で考えた場合、当然何ヵ月、もしくは1年近くその会社とつき合って、よかれと思う形でコンサルティングを進めていくわけです。その時、審査中にわれわれがちょっとこれは方向性が違っているのでは・・・という指摘が出たとしますね。すると、お客さんの立場は今までの何ヵ月ものわれわれとの信頼関係を一気に翻して、審査員の言うことが正しいというふうに一瞬にして変わってしまうことが往々にしてあるんです。
これもある意味、仕方がないんですが、審査登録機関としては審査の指摘とアドバイスをきちっと分けていただきたい。結局、受審側としては審査員が「いや、これは私の私見、アドバイスですよ」と言っても、審査の過程の中でそういった言葉が出ると、どうしてもそれが絶対的に正しい、こうしなきゃだめだというふうに受け取ってしまうわけです。
それと審査の中でするコンサルティングというかアドバイス、これはまだいいと思うんです。ところが、逆にコンサルもやりながら審査もしているところは問題ですよね。お客さんに対して、審査の確実性といったらいいのか、そういったものをゆがめる行動をしているところが現にあるのは問題です。
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長谷川 |
今、荒川さんが言われたようなことはJABだけではなくて、国際的な審査登録機関に対する認定基準、指針で全部NGですね。だから、われわれ認定審査員が立ち会った時にこんなことをやったらすべてNGだし、認定基準の中にも審査登録機関がさも自分のところで受けると早く取れるみたいなことををしてはいけないと書いてあるんですが。
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司会 |
審査とコンサルの「兼営」を売り物にしている会社があったとして、そういうセールストークにそそられるものなんですか。
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石橋 |
パッケージでマニュアルから何からどこがポイントかを十分に分かっている人がつくるわけですから、当然審査も通るでしょう。そういうところになびく気持ちはよく分かります。ですが、「ISOというのはあくまで道具なんだよ、まず会社の改善をやってみなさい」という指導の仕方で、真っ白な人間を教育するのか、「いや、資格は取らせてあげますよ」ということで入り込むのか、真っ白な人間にとってはどちらでも同じです。スタートでどちらとつき合ったかで、そこから先の進歩の仕方というのは180度変わってきてしまうのではないかという気がします。
ふだんの指摘の中でも、先ほど荒川さんが非常にわれわれにとって大事なことを言われたような気がするんですが、私は今の審査登録機関を非常に良いと思っている中には、はっきり自分の意見とISOの基準というのも、線を一本引いた上下でOK、NGとは必ずしもならずに、ある程度グレーゾーンがある。
審査員が見た中で、そのグレーゾーンを落とすという形じゃなくて昼休みや終了後に、「私はISOに対して、企業運営に対してこういう意見を持っているが、あなたの会社を見る中でこういうふうになるといいんだけど・・・」みたいな形で、まったく審査と関係ない中で、ぼそぼそと言っていただくような中味というのは、「ああ、そうなのか」と思うことが多々あります。そういった中で審査を有効に使っていけば、すごくスキルアップできるのでは・・・と思います。
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沖本 |
受審側からそう言われる審査員は幸せでしょうが、やはり審査員によって違うでしょう。そういう関係が構築できる審査員になるように教育をしなければならないでしょう。先ほど、長谷川さんと奥城さんから2000年版に変わった意図とか、要するに有効性をしっかり見るというふうに、審査員の役割は変わるわけです。2000年版になって、審査員が本当に大事なこと、いわゆる木よりも森をきちんと見るというという審査になるかは正直、非常に心配です。木でも大木を見て指摘してくれるならまだいいですが、「指摘しやすいから指摘しました・・・」みたいな指摘ばかりをされると、受審側には何の役にも立たないでしょう。
それから審査員の“アドバイス”についてですが、この規格はこういうこと意図しているということをしっかり説明しても、それができないから、「例えば、こうすればいいよ」というふうに言ってしまうのではないかと思うんです。そこを「例えば」はいらないから、規格はこういうことをやれと要求しているということを、本当の意味で説明してあげることが大事だと思います。
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長谷川 |
われわれJABの認定審査員が立ち会う時は割合、優秀な審査員が出て来る(笑)。そうすると、こういう審査員ばかりだったらいいのにな・・・という感じなんです。ところが、苦情が入ってくるのは、とんでもない事例が多いんですよね。だから、優秀な人以外の審査にも立ち会えればいいのですが、勝手に抜き打ちでやるわけにいきませんから、これは非常に難しいですね。
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司会 |
これも賛否両論がありますが、コンサルタントが本審査とか予備審査に立ち会うことについて、嫌がる審査登録機関、それから認めている審査登録機関というのもあるようですね。
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奥城 |
コンサルタントというのは、基本的にはその組織の責任者ではないわけですよね。あくまでコンサルタントであって、経営責任とか実行責任はないわけですから、コンサルタントが審査の邪魔をしないように後ろにいたりすることまでは必ずしも禁止する必要はないと思いますが、横にいてうなずいたりとか、しゃべったりするというのはもってのほかです。ましてやその会社の人の代わりに答えるなんていうのはね。審査登録機関としても、責任のないコンサルタントの答えを受けて、それで判断をしてはいけません。ですから同席するとしても、ちょっと後ろにいて話を聞くぐらいでしょうね。
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荒川 |
今まで私は立ち会いはやらないというスタンスだったんです。ところが、昨年から今年にかけてなんですが、われわれとしてもぜひともISOを取得していただきたいという立場から、できるだけ1〜2時間ぐらいは立ち会うというふうに変わってきたんです。
なぜかというと審査員の問題。自分のペースで進めてしまうという審査員もいるのも事実ですし、企業側のレベルの低下、要するに指摘事項に対してまともな是正対策ができない、悲しいことに、審査員がどういうことを言ってこの指摘を出したのかすら理解していないという例もあるわけです。だから、そこにはもう私どもが最初は、審査登録機関の方が承諾すれば、最終日に1〜2時間は立ち会うようにしています。
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奥城 |
その時は後ろで聞いているだけですよね。
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荒川 |
もちろんそうです。
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奥城
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やはり基本的には立ち会うのは望ましくないというのは大原則でしょうね。でも絶対グレーゾーンがあるから、その場にいてやりとりを聞くぐらいは認めようという感じならいい。もし、その場でアドバイスを与えるということが頻発に起こるようになると、審査登録機関の姿勢もだんだん厳しくなってくるでしょう。
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司会 |
今後のISOの審査、あるいは審査登録機関自体に求めること、それから、特に中小企業が審査登録機関を選び際のポイント、審査への対応などについてのアドバイスをお願いします。
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石橋 |
審査機関の選び方ということになれば、先ほどからも出ているように、いかに自分のところと同じ業種で育った審査員の方がどのぐらいるかで判断すべきでしょう。審査を受ける側の立場として考えれば、せっかくお金を使うんだから、何とかISOの審査を自分たちのスキルアップにつながるような形に持っていかなければ、お金のムダ遣いです。非常に大きなお金がかかっている以上、ISOをとにかくうまい方向に持っていけるような努力が必要です。
われわれ企業自身がよくなろうという努力をしない限り、どんなにいい道具があってもうまく使うことはできません。われわれの希望としては、審査登録機関にもどんどん変わってもらって、ISOが企業にとっていい道具になるような努力をわれわれと一緒にしてほしいと思います。
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沖本 |
コンサルタントの立場として私がいつも気をつけているのは、しっかりと会社としてのポリシーを決めるということです。自社のやり方は規格の要求と照らし合わせても、大抵の場合はそんな違わないんですから、自分たちの仕事やり方を相手方(審査員)しっかり説明できるような説明能力をつけられるようにするかということに気を遣っているんです。このポリシーを持っているところは概して良い結果が生まれています。こうした点に気を配られたらいいでしょう。
それから審査登録機関には、受審企業側の言うことをもっとちゃんと聞いてあげてほしい。審査のスケジュールや審査員の派遣人数などは、審査登録機関側の都合が優先されたものになりがちです。もう少し受審企業の都合をよく聞いて、その意向をなるべく吸い上げてあげるようなスケジュールの組み方や審査員の派遣をすべきです。
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長谷川 |
2000年版という局面で見ると、単なる製品保証だけの世界ではなく、マネジメントシステムなわけですから、自分の会社のマネジメントシステムを審査してもらうのにふさわしい審査員じゃないと困るわけですよ。だから、企業としてはいくつかの審査登録機関から事前に相見積りを取ることと、審査員の質、割り当てられた審査員に対していろいろ情報をもらって、納得いくまで検討した方がいいと思います。
審査登録機関だって一種のサービス業ですから(笑)、自分がやった仕事で相手がよくなるというのは成果ですよね。だから、審査員も私が審査した会社は絶対よくなる、自分の指摘したとおりのことをやってくれれば、絶対会社のためになるというふうにならないと本当は困るんですが・・・。
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荒川 |
やはり企業側ももう少し審査登録機関の研究をした方がいいですね。巷には、どんな審査登録機関がいいかという内容の本も出ているようですが、正直言って上っ面なことしか出ていませんよね。実際、どんな業種を審査できるか、審査員が何人いるか、実績はどうかという評価だけでは選べないんですよね。
ですから例えば、見積りの件もそうなんですが、われわれは必ず相見積りをお願いしますけれども、出てくる見積りを比較して、お客さんはどれを選ぶかといっても、分からない部分が多いんですよ。結局、サーベイランスの感覚によっても違いますし、審査員が何人来るのかというところも、具体的に深読みしないと、実際の交通費や宿泊費などもなかなか分からないというような見積もりは多いんです。先ほど、審査登録機関もサービス業だという話が出ましたが、お客様に分かるような明確な“明瞭会計”を出すべきでしょうね。
それから審査登録機関も民間企業なんですから、当然お客様を選んでもいいと思うんですよ。今は、なんか断ってしまうと悪いというふうな雰囲気がありますよね。審査登録機関にしても、当然のことながら、大企業が得意な場合もありますし、中小企業が得意な審査機関があっても、しかるべきだと思いますよね。だから、どの業種でも見るということではなく、得意な分野だけに絞って審査するという審査登録機関が出てきてもいいと思います。
あと、先ほども話に出た情報開示ですが、審査登録機関側に審査員のブラックリストをつくれとは言いませんが、実は企業が欲しいのはそういうものなのです。だから、そうした本当に必要な欲しい情報がまったく出てこないという状況を何とかしてもらわないと、営業マンがセールストークで仕事を取っていってしまうような状況が出てきてしまうでしょう。
それと1回取った後の更新の際の審査登録機関の乗り替えについて一言申し上げておきたい。一般企業もまだ認識が少ないようですが、審査登録機関の立場で言えば、「今度の更新ではうちをまた選んでいただけますか」というような立場、関係が欲しいですね。
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奥城 |
まず、審査登録機関の選び方ですが、最初は企業の認証取得の目的をはっきりするということが一番の大前提になるんです。日本のISO取得組織体の大半がただISOの認証取るだけで終わっているという話をよく聞きますが、取るだけという組織体がだんだん少なくなってきて、小さい企業は企業なりに長年やってきたわけですから、認証を取るためではなく、何かもう少しプラスアルファの目的が当初からあると思うんです。そのあたりをスタートの際に社長がきちんと明確にすべきです。まず、そこがスターティングポイントになると思います。
そこで、実際に審査登録機関を選定するためのに検討項目ですが、答えは1つではありません。まずは審査に対する審査登録機関の方針、目標、それからその成果がどうなっているのかについて、もっと情報開示を求めていくべきです。審査登録機関としてどういう方針、目標でやっているか、その成果はどうなってるかということを書面で要求するようなこともあっていいでしょう。
それから、審査登録した企業数と審査員数の割合をよく見てほしい。あまりにも少ないようだと、それは多分忙しすぎて、あまり面倒を見てくれないな・・・、と大体の見当がつくでしょう。それから外部契約審査員の割合はどうなっているかという情報も重要です。審査員の能力については、最初に話を聞く時はなかなか難しいでしょうが、例えば、審査員の能力を保つために、どういう方針、方法で質をキープして実行していますかということを聞いても差し支えはありません。
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司会 |
これで座談会を終了させていただきます。長時間にわたりまして、非常に興味深い貴重なご意見をどうもありがとうございました。
(文責・編集部) |