Ｑ． 審査登録機関の見積もり
審査機関を選定する時期になり、見積もりを取り寄せましたが、内容が良く解りません。いくつか別の機関からも取り寄せましたが、うまく比較が出来ません。見積もりをどのように見たら良いのでしょうか？


藍田良雄：　審査機関の見積を見て、いつも思うのは、何故審査費用はこんなに高いのだろうか、ということです。デフレが進む世の中で、唯一下がらないのは審査機関の費用だと、嫌味も言いたくなります。ところで、内容が解りにくい点でも審査機関の文書はピカイチです。見積依頼書、審査申請書、審査報告書など難しい文書ばかりです。見積書を見ると、まず、費用の明細が曖昧です。何のためのどういう費用か、釈然としません。相見積りしようとしても、項目が統一されていないため、比較しようとしても難しいのです。内容を推測して、並べながら比較するしかありません。交通費は？宿泊費は？と、訊ねても「当機関の規定による」という返事が一般的です。まったくもって、顧客の立場で作成されていないのは明白です。これで企業の顧客満足を審査しているのですから、不思議な話です。唯一つのメリットは、見積書を眺めればその審査機関の顧客重視の姿勢が、良く見えてくることです。結局、比較のための一覧表を作成することになりますが、不明確な点は何度でも聞き出すことをお勧めします。回答を渋ったり、面倒くさがったりする場合も、評価の対象にするくらいの気持ちで遠慮なく、問い合わせましょう。

柄守川我留男：　ＩＳＯ審査登録機関の費用を検討する際には、次の項目を考えてほしい。
�@ネゴして値切る：審査機関の見積と言っても公共料金ではない。最低3社から相見積もりをして、値引き交渉は当たり前の考えで望む。
�A交通費、宿泊費：これらの内容と明細を聞き、実費というなら、料金を計算してみる。グリーン車は勿論辞退願うし、タクシー代は企業が送迎をして削ってもらう。規定のホテル代一万円以上も７、８千円が常識だ。代わりに、企業から手頃の宿を提供すればよい。
�B移動費とは何だ？：審査員の自宅から企業までの移動に要する時間の費用らしいが、ならば、企業に近い住所の審査員を指名する。
�C審査日程に余裕があるならば、近くに審査を受ける企業と、臨時グループ受審が出来ると良い。交通費、宿泊費だけでなく、営業的な観点からも割引が期待できる。
�C請求書が来て初めて金額が分る：事前に詳細な内容をチェックする。勿論消費税の有無も。
�D予備審査：企業が日数と予算を決めて相談する。
�E更新審査までの総費用で比較する。
�F研修生：（審査員補）の受入は、必ず企業側に負担が掛かる。審査制度の上から仕方ない場合があるが、当然条件を付けよう。
�G審査費用は、企業の規模により区切られる。見栄を張らず、従業員数を見直してみる。
�Hその他：基本料、審査料、登録料、登録証発行料、登録維持料、更新基本料などの詳細を検討する。審査機関により、数倍の違いもあるので注意が必要だ。
審査費用は、審査登録機関選定の１つのファクターにしか過ぎない。金額第一ではなく、総合的な判断をしてほしい。

欧木普都生：海外の審査登録機関の方が、国内の機関に比べ、概ね費用は安い様である。
以前は、審査機関の費用の差はブランドの差？と認識していたので、意外に思ったことを覚えている。審査機関の説明では、審査員の身分と教育訓練費用が大きいと言う。また、ＪＡＢから認定を受けていない外資系の審査機関の説明では､その認定料が高いのだそうである｡いずれにしても、審査機関の単価は、高過ぎはしないだろうか？日常的に単価の引き下げに苦労する製造業とは、別世界の話のようで、審査機関が、コスト削減努力をしているとは到底思えない。官僚やお役人と同じである。
ところで、コンサルタントの費用と対比してみると、審査員は企業を訪問して1〜３日で企業の品質システムが、ＩＳＯの要求事項を満足しているかを審査する。専門性を有する審査員が審査するとしているが、その企業の業務を全て理解し、システムを構築できる力量を有している訳では無いだろう。彼らが受ける教育研修は、関連規格と審査ガイドラインが主である。対して、コンサルタントは、企業側の業務を全て理解し、ＩＳＯシステムを設計し構築していく。効果の上がるシステムを構築するために必要な力量・経験・知識は、審査員とは比べ物にならない。この事だけでも、審査費用が高くなるという審査機関の言い訳は、納得できないだろう。