Q5. ダイエットISOの弊害?
ISO取得中の50名の中小製造企業です。ウチの文書を同業社に見せると、「立派な文書ですね」と、いやみを言われました。その企業を担当したコンサルタントは、安い・早い・シンプルが売り物です。その薄い文書は魅力です。しかし、この企業の品質は以前と相変わらずで、取引先からワースト企業の指定を受けています・・・・・・
藍田良雄: まず自社の現状分析から始めて、ISOの要求事項の足らない部分の文書を継ぎ足していく、これが賢いやり方だと思います。初めから参考書や、大手企業の雛形文書を手本にして文書を作成していくと、どうしても大掛かりな文書体系となり、過剰な文書となってしまいます。
私は96年以来、次の様な方法を取っています。【管理規定、不必要な作業手順、品番ごとのQC工程表は作らない、作った文書は配付しない】方法です。これは、著名なISOコンサルタント西沢隆二先生の発案です。この方法によれば、管理文書は一冊のワンマニュアルとなり、文書の作成は勿論、読みやすいので理解も早く、改訂・改版などの維持管理も簡単で楽な、非常にすばらしいシステムになります。審査の対象は一冊のマニュアルと、記録だけです。標準・手順書類は順次追加していけば良いのです。近頃、この方法を真似たコンサルタントが増えています。しかし、充分な業務分析をやらず、薄いサンプル文書を渡して企業に文書作成させる粗悪な指導が多く、業務の改善とならない状況が見られるのは残念です。
柄守川我留男: 「山のような管理文書を数cmに減量」、「膨大で複雑な文書が、薄くスマートに変身」、「品質文書をダウンサイジング革命」こんなコンサルタントのうたい文句に釣られた企業は多い。文書の量に反比例して、維持管理が楽で、良いシステムだと本気で思っているアホが多い。雛型文書を使い12回〜15回の回数で、安い費用を売り物にしているコンサルもいる。そんなISOを導入した企業に聞いてみたい。導入後に、作業の効率化、不良の削減、顧客からの評価が上がったのか?企業の現状分析もろくに行わず、雛型文書を書き換えたISOが、その企業の業務を改善できるはずがない。ただ、認証を得るための薄っぺらな仕事である。
そもそも、文書とは何か?何のために作るのかを、真剣に考えていないISO担当者がいることが問題だ。例えば、身体にフィットした背広を作るにはプロの技や仮縫いが必要である。型紙を渡して、裁断、縫製、手直しを十数回の指導で、しかも企業に行わせるのは、無謀かつ無責任というものだ。既製服をオーダーに見せかけながら、「自ら汗を流して構築しないとISOは身につきません」・・・・・・空々しい言い訳だ。
欧木普都生: かつて大手企業型ISOをそのまま中小企業が導入して、システムの複雑さと文書量の多さが弊害をもたらしました。その反省から、シンプルISOが注目されています。これは、ISOの専門委員会TC176が作成した「中小企業のためのISO9000:ISO/TC176からの助言」でも勧めています。しかし、一部の心ない人たちが、この考えを歪めています。
シンプルISOもダイエットと同じです。自分の身体(企業の組織)をよ〜く観察(調査・分析)しましょう。健康的にきれいにダイエットしたいのなら、自分の理想的な体重と肥満の根本的原因を探るのが先です。体重(システム)が重いからといっても肥満とは限りません。標準体重にもかかわらず、「自分は太っている」と思い違いをしている人は多い。体脂肪率が重要なのです。脂肪組織(ムダ)を落とさず、筋肉や骨を痩せさせては致命的となります。企業活動や業務改善を遂行する体力も奪いかねません。
「飲むだけで十キロ痩せた!」「痩せる妙薬!効果絶大減量食」痩せることを礼讃する風潮はいまや常識です。しかし、中国製ダイエット食品で肝機能障害を訴える報告例が続出し、死亡者が続発しています。リバウンドしないダイエット法は、世界中探しても無いそうです。過度のダイエット、インスタント食品、偏食は骨鬆症の原因になります。間違ったダイエットISOで企業の屋台骨がスカスカにならないためにも運動(訓練)やカルシュウム(教育)の摂取は大切です。無責任な参考書やコンサルタントの言葉に惑わされないでください。
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