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TOP当社実績雑誌・新聞掲載>プレス技術第16回
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プレス技術連載第16回
Q. ISO取得のアピール
2年前にISO9001を取得しました。その後取引先の信頼も向上し、ISOの取得は成功だったと思います。しかし、社長はじめ当社の経営陣にはISOを積極的に経営に利用しようとする姿勢が見られません。苦労してシステムを構築した担当者としては、もっとISOを営業や経営姿勢に反映してもらいたいのです。ISO取得のPRといえば、名刺に記載した程度で会社案内やホームページにはいまだに何も書かれていません。
取引先からは14001取得も打診されていますが、私としてはまた報われない仕事をさせられるようで、少し寂しいような気持ちです。他の会社もこんなものなのでしょうか?


藍田良雄: 
当初、製造業に集中していたISOシリーズの認証取得の動きは、今やあらゆる業種に広がっています。このマネジメントシステムが全ての事業に対して適用されるものだということがようやく理解された結果、運送業やコンビニエンスストアをはじめ、テレビCMや各種広告媒体でのISO認証取得のアピールが一般化しています。このような場面では、ISOシステムの認証取得を「信頼のラベル」として活用しています。
 品質や環境に関する企業の取り組み姿勢を、お客様や利用者にわかりやすくアピールし、お客様や利用者からの信頼は大きく進展します。あなたの名刺にISOの文字やロゴマークが入れば、名刺交換の際に他社との差別化に必ず貢献します。
 中国のISO取得は、経済発展同様に凄まじい勢いで増えています。登録件数では、既に日本を大きく上回って、工場団地ではISOの看板が林立している状態です。そればかりか、上海などの大都市では、タクシーや一般商店までもが「我が社(店)は、国際品質規格のISO9001の認証を取得しました」という看板を掲げています。
 これからは、中国企業や中国に進出した他国籍企業との取引には、「ISOの取得」を全面に出すことが絶対条件になることは間違い無いでしょう。
【審査登録証とロゴマークの使用】
 ISO取得のピーアールにも幾つか注意点があり、登録証やロゴマークの使用条件を理解しておかなければなりません。
審査登録機関は登録審査が終了した後、判定委員会において合格と判定されると、登録リストに登録し、顧客が選択した認定機関(JABやUKASなど)に登録を行うとともに、審査登録証を発行します。登録証には、適用規格、登録範囲、登録年月日、有効期限等が明記されています。企業は登録証が届くまでは、新聞発表などの告知を控えなければなりません。審査登録機関は、「登録マーク・ロゴ使用規定」などを制定しています。
・ 登録証の有効期間は3年間
・ 登録組織は、登録証に表示されているロゴマークを、会社案内、カタログ、説明書、封筒、 レターヘッド、名刺などに登録証に記載された登録活動範囲内で使用できる。
・ 指定色:マンセル指定又は近似色とする・・・
・ ロゴの表示例・・・・・・
・ 認定機関のロゴは必ず審査機関のロゴと併記しなければならない。
・ 審査基準(JIS/ISO 規格番号)と登録証書の登録番号を必ず表示する。
・ 登録範囲業務に従事する者のみが当該ロゴマークを記載した名刺を使用できる。
・ 支給されたロゴマークの原版(清刷)を複製して使用するが、大きさや色に注意する。
・ ロゴマークは製品に与えられる訳ではないので、登録証を製品上に表記したり、製品が適合しているかのような誤解を与える表示法方、登録範囲を逸脱するような方法で使用することは出来ない。文章のみによる事実の記載は、「この製品はISO●●に適合している工場で作られた」などの表示とする。
・ 登録組織が次のいずれかに該当する場合、登録証及びロゴマークの掲示、その他の使用を禁止されます。
「登録の失効、一時停止又は取り消しの時」
「登録マーク・ロゴ使用規定が遵守されなかった場合」
・ 登録が取消された場合、審査登録機関は直ちに登録証及びロゴマーク原版を回収し、登録を引用している全ての宣伝広告を中止する。


柄守川我留男: ご存知のようにISOは、欧米の視座で作られている。アングロサクソンの文化を基に構築されて来たと言っていい。大陸的な異文化、多言語、多宗教と侵略の繰り返しの中で彼らが編み出したシステムである。彼らにとってISOの取得は、経営の防衛的手段だけではなく、より攻撃的な手段であると考えられる。
 しかし、謙虚さを美徳とする日本人の気質としては、ISOをアグレッシブにのみ利用することは出来ないようである。他者を出し抜いて一人勝ちすることに、道義的な抵抗を感じるのであろう。
【日本画と洋画】
 "アピール下手な実力者"の側面も有るだろうが、派手なパフォーマンスを好まない、質実な経営者が多いのも事実である。
例えば水墨画と油絵のような、日本画と洋画にも日欧の考え方の違いが現れている。柳や松の木に止まったサギや鷹の水墨画には、余分なものは省略された構図が多い。簡潔の美がみてとれる。また、獲物を狙う目線は彼方に跳ねる魚を見つめ、その姿も画面の中に在る事は少ないはずだ。水墨画は塗られていない空間のほうが多く、それが、イマジネーションの広がりを表している。
 一方、洋画は殆どの場合はキャンバスが塗りつぶされていて、水墨画のような余白は殆ど無い。それは画面全体で物語を表わしていることが多いからだろう。しかし、茫漠とした空や、海辺を狭いスペースに描ききれるものではないだろう。
 「表現力が乏しい日本人」 反面、日本人には"言いたいこと"、"アピールしたいこと"がはっきりしないために不利益を被ることが多い。それは企業や経営者ばかりでなく、若い人にも当て嵌る。学生の就職活動を例に取れば、希望する企業への自己PRや、志望動機にしても、何を言いたいのか伝わらない学生が実に多いのである。自分の意志や考えを、普段は携帯で会話し、メールで表現しているわけだから仕方ない部分もあるだろうが、履歴書などは公式文書である。一目見てスムーズに意味が通じる"自己表現力"が無ければ、相手には正当に受け入れてもらえない。
 まずはアピールするのは何か、それをどう伝えるべきかを思考する。要は、単に我が身の長所を書き並べてアピールするではない。その業務を実施するとき、より高いグレードで行うのに必要な"勘所"の具有をアピールするのである。
【・・・する覚悟がない】
 実は、就職希望企業にエントリーする学生の殆どが、 "アピール"以前の問題を潜在させている。"取り敢えず"就職するというレベルの気持ちで就職する学生がほとんどだという。学生生活の延長で、就職活動や仕事そのものも、指示は誰かがくれるものと思い込んでいて、自分で働く、
自分で稼ぐ覚悟がないのだ。
 「取り敢えず、ISOを取りたい」という考えが悪いわけではないし、どう取得しようと自由だ。しかし、そういう対応で仕事が増えるほど甘い状況ではない。
アピールする内容や方法を考える以前に、まずはアピールすべき己自身を知り、我が身を磨くことだ。
【ISOの不適表示】
 企業が単にISO認証取得と外部に訴えるだけでは、外の人間から眺めると業務全体なのか、限定業務なのかが不明である。
SCOPEに入らない事業部門がある状態で認証を取得した場合に、認証ロゴ使用の制限を真摯にとらえている企業は意外に少ないものである。
通例として言えば、登録証を受け取ってロゴが使えるようになるときに、審査登録機関からロゴ使用条件の指示文書が添付されてくる。また、認定機関は「認定マーク使用規定」を定め、認定ロゴマークの使用方法を定めているが、実際の適合組織(企業)は、認定機関の認定マーク使用規定に基づいて作成された審査登録機関の取り決めに従うことが一般的だ。その文書には、SCOPEについて外部に誤解を与えないような表示をしなさいと書いてある場合が多いのだが、会社案内やカタログにロゴを使用する際に "このロゴが証明する業務はSCOPE 内かSCOPE外かを外部の人間に明確にせよ"と理解しない企業が多いのである。最近、これらの規定を遵守しない使用例が一部の組織に看守されるようになってきた。
 製品の梱包材表示や製品の新聞広告に「ISO認定品」と大きく表記したり、認定機関のロゴを審査登録機関のロゴと一緒に屋外看板に大書きする企業もある。また、運送会社が本社と一部営業所の登録にも拘らず、全営業所を回るトラックの後部荷台にロゴマークを貼っている事例もある。

欧木普都生: ISO取得が様々な業界で進み、ISOを取ったからと言って目立つ事はほとんどなくなりました。"業界初"という文字も最近ではほとんど見かけることもありません。ISOの一般化が進む中、ISOは本当に経営に役立っていますか。ISO取得が、ただの「看板取り」に終わってはいないでしょうか。
【外部に向けてのアピール】
 ISOを取得し、登録されたら真っ先にするのは広報活動でしょう。せっかくがんばって認証取得したのですから大いに自慢してください。一般的に思いつく活動としては、看板、横断幕、新聞や雑誌、電話帳その他各種広告の出稿広告などですが、お金をかけなくても大丈夫、もっと地道な手法でアピールする方法もあります。 "ISO取得"の文字をどこにでも記載するのです。名刺、会社案内、インターネットホームページ、eメールの署名欄、封筒やレターヘッド、書類やFAXの送付状、宅急便の伝票、クリアホルダー、紙袋、商品パッケージ、包装紙、パレットやバケット等の通い箱、自動車、トラックの荷台、ペン、メモ用紙、パンフレット、各種販促書類、提案書、見積書、カレンダー、マッチなどノベルティグッズ、電話の保留や留守番メッセージ等々業種によっては、他にも様々なアピール方法がありそうです。
顧客や新規に顧客になりそうな人たちへの目に触れるチャンスがあるところには、必ず"ISO取得"の文字を入れておきましょう。
【アピールの意義】
 テレビ広告などでもよく「ISO認証取得」の文字を見かけるようになりました。でも単にISOを取得した事だけをアピールするよりも、「ISO取得で、この製品やサービスがこんなに向上した」、「ISOを取得したおかげで利益が倍増した」、「当社の省エネ、リサイクルなどの取り組みや環境目標達成率は・・・」、「当社のISO取り組みは、こんな形でお客様にメリットを・・・」というような、経営にプラス効果をもたらした実績をアピールされることにこそ重要性があるかと思います。
単に「看板」「お墨付き」として取得するのではなく、経営ツールとして大いに活用したいものです。そしてグローバル時代にふさわしい強いプレス板金業を目指しましょう。
【経営者の問題】
 経営者の考えや姿勢でISOのアピールも変わってきます。
登録審査が終わったと同時に『もうISO取得の看板を出してもいいですか?』と聞いてきた社長がいました。審査合格が嬉しくて堪らずに、一刻も早く知らせたいのだという。この会社の建物には半年前から横断幕が下がり、工場入り口には、「ISO14001挑戦中」の立て看板が建っていたのです。数週間後に登録証が届き、社長はニッコリしながら看板の"挑戦中"の文字シールを剥がしました。その下には"認証取得"の文字が既に印刷されていたのです。
 なんとも用意の良い話ですが、逆にISOを取得しても表明したがらない社長さんもいます。せっかく認証取得したのにもかかわらず、名刺にはISOの文字もなく、会社の内外にもそれらしい看板もありません。
 『何故ISO取得をアピールしないのですか?』と聞くと、コンサルのあんたに金をつぎ込んじまったからネ〜と冗談を言われたが・・・よくよく聞いてみれば、優良企業のこの会社は、うっかりISO取得を漏らすと、取引先から単価の値下げ要求や、同業者の妬みが怖いというのです。
『ISOを取るくらいに儲かっているなら、もっと受注単価を下げてくれ』
『ウチは原価割れする程厳しい単価しか貰っていないのにお宅は・・・』
これら周囲の人たちの認識が変わるまでは、天下晴れて認証取得を発表出来ないというのです。〈ISOを取得したところは、お金もちの余裕の有る会社〉という認識がまだまだあるようです。
【自分自身へのプレッシャー】
 人間の意志は弱い物で、最初の緊張感や取得当時の"やる気"を維持することはむずかしく、たいてい途中で崩れやすい。自分自身にプレッシャーをかけるとか、「タガ」を嵌める意味で定期又は維持審査がISOシステムで要求されているのも頷けます。
 ISO取得時に登録をアピールするために会社案内やホームページ、名刺などのロゴマークを使う等の対外的なアピールと共に、横断幕や看板は社内に向けてISO取得の決意と使命感を高める為に重要な役割を持っています。ある企業は、会社の入り口にステンレスで作ったピカピカの「ISO取得看板」を取り付けました。ISOの文字・審査機関のロゴマーク・企業名が鏡面のように光り輝く贅沢な看板ですが、社長は『この看板に負けないような会社にするんだ』と決意を新たにして、社員と一緒に磨いているというのです。
 本当の意味でのISO取得によるメリットを出せるかが、これからは重要だと思われます。ISO取得という看板だけで、中味が伴わないと、取引先や社員も気合い抜けすることになります。
ISO川柳
ロゴマーク 企業の値踏みの 評価点
(発注者)
取得ったのと 取得らせた所で 混む紙面
(広告欄)
取れば立て 立てば磨け! の親(社長)心
(ピカピカ看板)


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