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プレス技術連載第6回
Q. 顧客満足とは?
顧客満足の調査のため、アンケート用紙を作成し、購買担当者を訪ねましたが、あまり熱心には対応してくれません。他の顧客も迷惑そうな顔で、自信が無くなりました。顧客の満足とは、どのように捉えたら良いのでしょうか?


藍田良雄: 
ISO9001:2000では、 8.2.1顧客満足をモニターするという新しい要求事項が追加されました。ここでは日本語訳の「満足」という言葉が、英語の原文とニュアンスが違うことを理解しなければなりません。英語の原文であるsatisfactionは、日本語のニュアンスである「最大級の誉め言葉」を考えていないのです。
日本的解釈を逆に英文に当て嵌めるならば、
excellentになるのでしょうか。旧版に見られた、明らかな誤訳とまではいえませんが、日本人にとっての「顧客満足」の語彙を考慮に入れなかった、硬直的な日本語訳には違いありません。
――この「顧客」と言う意味であるが、辞書で調べて見ると、「おとくいの客」とあり、次に「とくい」をしらべると、「贔屓、日常よく取引のある相手」である。さらに「客」を調べてみると「料金を払って物を買い、または見物し、あるいは乗り物に乗る人」とあった。しかるに、「顧客」とは「客」より「おとくい」が付いている分、重要で価値があり、大切なのである。――(あるコンサルタントの解釈)
規格原文の
satisfactionの元になる「satisfy」を英和辞典で見ると「条件、要求を満足させる事」とあります。やっと基準を満たす程度、つまり、優・良・可・不可でいう可のレベルでもsatisfactionなのです。顧客満足として日本人がイメージする「お客様が製品・サービスに感動する」状態は、どうやら「customer delight」が適当のようで、直訳すれば「顧客歓喜」となってしまいます。これを達成するには、一時的には可能にせよ、継続させることは現実的ではありません。規格の要求レベルはそれ程高くないことが、容易に想像できます。また、Customerの和訳は「顧客、取引先、得意先」です。上得意先でなくても、一見の客でも要するに買ってくれそうな相手のことであり、客の区別はしていません。先のコンサルタントが日本語訳の「顧客」からの解釈で、おかしな説明になったのは、原文のcustomerで調べていないのが失敗のようです。
では、このお得様の満足とは何を調査すればよいのか。幾つか、方法を考えてみましょう。
最も一般的で、簡単な方法で「顧客」の情報を得る手段が「アンケート」による調査です。小売店やレストラン、ホテルなどの接客業であれば「お客様のご意見」などと書かれた用紙が置かれていたり、購入した商品に説明書と一緒に「お客様アンケート」の葉書が同封されていたりします。
ここで、再び先のコンサルタントの登場です。

――しかし、「顧客」の場合は、上記の「アンケート調査」は当てはまらないであろう。なぜなら「顧客」の意味は「贔屓(ひいき)客、日常よく取引のある相手」であり、顧客の立場からみれば「ある一定」の満足を得られるから、継続的に取引をしている、のである。極言すれば、取引を継続してもらっていること自体が、満足を満たしていることになるのだ。ということは、「アンケート調査」の必要もないのではないだろうか?という結論になる。――

以上、参考意見として取り上げました。企業がこの考えを取り入れるのは自由ですが、何を目的としてISOに取り組むのかを考えれば、判断を誤ることはないでしょう。
それでは、アンケートを使って調査を行う場合の注意をいくつか述べていきます。
出来るだけ記入者の手間をとらせないよう、質問の文面は判断に迷わない内容とします。また、あまり長々とした質問は、回答者を不快にします。簡潔で的確な内容になるようにしてください。質問のすぐ下に回答欄を設け、チェック又は丸で囲むだけにします。評価段階は三段階(良い/普通/悪い)が多いようですが、この場合、均一化された回答が予想されます。回答の殆どが「普通」となってしまうでしょう。「普通」を「顧客の要求事項」を満たしている程度と捉え、アンケートの実施者の期待が無難な結果を期待するならば、良い方法と言えるでしょう。しかし、これでは顧客の潜在的な不満は出てきません。回答者の選択範囲を広く取っておくことや、細かな不満も拾い上げられる工夫が必要です。

満足度の評価は、いろいろな尺度で行ってよいのですが、A〜Eなどの
5段階で行うときもC付近の回答、つまり、50から60パーセントあたりの満足度が、顧客満足の一般レベルと捉えるのが適当でしょう。日本語の語彙に惑わされて、満足度80点〜90点をsatisfy基準に置かないようくれぐれもお勧めします。

柄守川我留男: 「○○事業所は、による顧客満足を徹底追求するために、常に全員参加で改善を繰り返し…」ある企業の品質方針である。上記のような方針を発表している企業は非常に多い。藍田氏が指摘したように、ISOの規格から見ればおかしな内容だが、ほとんどの企業が顧客満足を一般的な意味と捉えて、このような文面になんの違和感も、感じていないようだ。
 
大抵の企業では、品質方針がISOに取り組む初期段階に決められている。コンサルタントが入らない場合は、方針の見直しもせずに、最後まで気がつかないこともある。本来ならば、審査員は方針で謳われている「顧客満足の徹底追求」が、どのように社内で展開され、実施されているかを監査しなければならないだろう。美辞麗句を掲げるのは簡単だが、実践は容易ではない。過剰サービスをして顧客の歓心を買うことが、顧客満足につながると思っている企業が多いのだ。また、顧客満足「度」の尺度として、どこまで誠心誠意尽くして顧客に喜んでもらうか、その「程度」のことを考えているようである。このような状況のままでは、「顧客満足」の解釈を審査員でさえも際限なく拡大させていく可能性がある。企業としては、企業独自の判断で、顧客に対して必要なことを必要と思われる範囲までやればよいのだ。しかし、審査員が方針の内容を見て、方針と社内のギャップを指摘し、「顧客満足の徹底追求」の実施を要求するか、または方針の修正をさせた事例もあまり聞いてはいない。
 日本人は「顧客」のイメージを論理的に捕らえようとしてこなかった。昔から、お客様は神様ですと言いながら、その実、企業の都合を優先させてきた。顧客の要求することを本気で考えてこなかったのではないだろうか。

その一方で、顧客満足を測るという言い訳で、顧客への安易なアンケートが増えている。
ある製造会社が作成し、顧客に記入を依頼した書類は、まさに噴飯物であった。当社を選定した理由から、競合する当社のライバル企業の情報、取引を増やしてもらうためには何を希望するのか?まで、延々と質問が続くのである。顧客の担当者は、毎年こんなアンケートを寄こすなら、この企業とは取引中止を考えると憤慨していた。営業とは、普段から客の要望を理解して、工場に送り込むのが役目である。この製造会社でも、普通ならこんな事を顧客に求めることはして来なかったはずだ。ところが、ISOの顧客満足が要求されて、安易なアンケートという手段に走ったのである。継続的な顧客で、ISOに理解?のある担当者なら我慢して対応してくれるかもしれないが、新規の顧客には、お願いできる筋合いのものではない。安易にアンケート調査を行わず、顧客満足調査の最終的な手段として考えたほうが良い。
 
顧客からの苦情やクレームは、企業にとって,重要な情報である。製品・経営品質を改善するための最優先課題と考え、適確に把握する必要がある。また,苦情を言ったり、クレームを出すのを遠慮する顧客もある。そんな人は、違う場所で本音を出すことが多いものだ。顧客の意見を引き出しやすくする工夫や、環境作りも大切である。
「どんな質問をしたら良いですか?」初めにこの質問を顧客に問うてから、アンケートを作成するべきである。押し付けがましい質問や、偽善的でへりくだった質問など、何の役にも立たない。

ある大手スーパーの惣菜売場の出来事である。閉店時間の30分前、まばらになった惣菜がパックに詰められて、値引き販売され始める。私が家に帰りながらの買い物は、
ちょうどこの時間帯となり、はなはだ都合が良いのだ。何時ものようにパックを買い物カゴに入れると、傾いた拍子に中の惣菜がこぼれ出した。輪ゴム一本でしか止めてないからである。以前に何度か同じような失敗をしているため、普段は用心して、備え付けの予備の輪ゴムを2,3本追加する。近くで打合せをしていた、売り場担当者と店長の二人に声をかけた。「パックの輪ゴムは、一本では困りますよ」
二人は私の汚れたカゴの中をみて、謝りながら直ぐに善処すると約束した。この大手スーパーは、全国的にISO登録を進めている。顧客満足・品質・環境・BSE・オーガニックなどへの対策に積極的で、私は日頃から感心していたのだ。しかし、半年経っても相変わらず輪ゴムが一本のままのパックが売られている。輪ゴムやそれを2,3本増やすコストを、論ずるつもりはない。この人たちは、自分でパックを買い物カゴに入れた事が無いのであろう。レジを出た台の上には、アンケートの用紙が整然と積まれてあった。
いったい「顧客第一」とはどういうことか?日本の現場では、理念、思想の企業統一よりも言葉が先走る事が多い。例えば、企業の内外には数々の「○○第一」目標の看板が掲示されている。「お客様第一」、「品質第一」、「安全第一」、「環境第一」等々、本来第一とは他に優先する、ただ一つの企業方針であるべきだ。
以前見た事のある、品質用語辞典に記載されていた顧客満足に関する項目を紹介する。

クオリテイ=単に品質の高低をいうのではなく顧客が評価し、価値を認めるすべての要素
競争力強化=他社とは異なった、又は、今までになかった顧客満足を実現していくこと
売上=顧客満足度のこと
シエア=顧客支持率
業績=顧客満足の成果


欧木普都生: 一般的に、私達プレス板金業のような製造業は、顧客の仕様や図面により仕事を受注するのが普通です。つまり、受注前(見積時)には顧客の要求事項がほぼ明確になっており、その要求事項を満たす為には、どのくらいのコストで可能かを提示することになります。この様にして申し合わせは契約の上で実行され、提供されます。結果として提供される製品に対する顧客満足とはまさに、「顧客の要求事項が満足されている程度に関する顧客の受けとめ方」と解釈することも可能です。ちなみに、要求事項が満たされた製品であることは当然として、顧客は提供されたその製品に対して「ギリギリ我慢」なのか「不満は無い」か、それとも「良い」なのか、どう受けとめているのかということです。つまり、顧客の100%の満足ではありません。規定の「顧客満足」の用語定義は、「顧客の要求事項が満たされている程度に関する顧客の受けとめ方」であり、「顧客が期待することであれば、なんでも満足させる」という意味でもありません。
勤勉すぎる日本人は、顧客満足を非常に高い水準、全身全霊を上げて取り組む活動と考えているようです。ところが、ISO委員会で外国の委員から「一回取引した顧客から再注文がくれば、顧客満足を得ていることになる」と発言したと伝えられています。このように「顧客満足」を実現することは「満足度を最大限に追及する」ことでは無いのです。「顧客満足」の考え方は、前章で詳しく述べられているので、これまでにします。
ところで、ISOとは取り分けて考えるならば、「100%以上の顧客満足」が、あるのも事実なのです。ちなみに、もうひとつの発案型(コンペティション方式)による受注形体では、明確な顧客要求事項以外に、顧客が求めなかった要求事項や潜在的なニーズ、つまり密かな期待までも含んだ、「顧客を最大限に満足」させるための提案をしなければ選定されません。当然、これは先に述べられたISO9001の要求の範囲を越えているといえます。もちろん提示できるコストは安価なほど顧客を満足させます。しかし、「満たします」と約束された内容について、顧客の期待が大きければ、見積金額が他社より多少高くても選定の障害にはならないでしょう?つまり、これからのプレス板金業は、顧客満足度向上は当然ながら、提案のできる営業活動も、また別種の顧客満足で要請され、それが可能な企業こそが、他社との差別化に繋がることになるのでしょう。ISO9001を足掛かりとして、どのように次の展開をさせるのか、2000年版対応という狭義の活動を越えて、企業のあるべきスタイルを考える時期にきたのかもしれません。

しばらく前に『真実の瞬間』(
MOMENTS OF TRUTH)という本が話題になりました。業績低迷にあえいでいたスカンジナビア航空(SAS)を、顧客本位の企業に作り変えることによって優良企業に育て上げた成功物語であり、「サービス」「顧客満足」「リーダーシップ」などについて書かれた本です。顧客第一の思想を徹底するということ、動機付けの維持の難しさなどについてわかりやすく書かれています。「真実の瞬間(とき)」とは、最高経営責任者であり、著者のヤン・カールソンが、唱えた『従業員が顧客に接する最初の15秒の接客態度が、その企業全体の印象を決め、企業の成功が左右される』ことを指しています。その15秒が顧客にとって、その企業を具現する『真実の瞬間』ということです。
ヤン・カールソンは、なにも革新的なことばかりをやったのではなく、顧客の立場に立ち、冷静に考えれば見えてくるモノをターゲットとし、実行に移しました。彼は顧客満足を提供するのには、第一線の社員だけで出来るとは考えていませんでした。現場への権限委譲を進め、職員に決定権を持たせることで、顧客が満足するサービスを提供できる下地を作りました。トップを頂点とする、従来の伝統的で一般的なピラミッド型の組織を改め、企業組織構造を逆さまの逆三角形としたのです。そして、その頂点にたくさんの顧客を据えました。お客様を頂点とする組織に変革したのです。いま考えてみれば、当然の姿です。
また、顧客重視の業績評価方法に変更するなど、経営全体を変革することによって、顧客満足度を向上させていきました。確固として充分に練り上げられた方針を持つこと、リーダーには大まかに物事を捉えそれをリンクさせる能力が必要です。彼が作った「顧客中心主義」は奏功し、顧客の急増につながり業績の回復を果たしました。いままで、企業の都合を顧客に押し付けていたことを、逆転の発想で全面的に見直し、新鋭設備導入などのハードの充実ではなく管理の充実を行っていきました。
もっとも、最終章では新たな問題が発生してきたことを告白しています。目標を与えられた人は、それにまっしぐらに突進し、完遂しようとしますが、到達してしまうと進むべき道を見失ってしまいます。明確な方針を設定したものの、あまりにもスピードの速い改革を進めすぎたために、方針の見直しと、新たな目標設定がされなかったのです。PDCAが、上手く回っていない状態になっていたのです。入試を終えた受験生が陥る、空白の時期に似ています。これまでは明確なビジョンを提示して、がむしゃらに従業員を引っ張っていくだけでよかったのですが、それを維持し、更なる向上を目指すのは、彼にとっては初めての経験となったのではないでしょうか。この取り組みを見ている読者には、筆者がISOのコンセプトをほぼ満たしていることに気がつくはずです。彼がスカンジナビア航空の社長に就任した1981年にISOがあれば、かれの業績はもっとすばらしかったでしょう。

今、厳しい経済環境を背景にして「顧客満足」「顧客第一主義」または「ブランド戦略」などの命題を発信する企業が急増しています。しかし本当に足下まで見つめているのだろうかと疑問を感じる企業も目に触れます。現在、多くの企業が「顧客本位」のプロジェジュトを採ったり、取り始めています。しかし、ある程度まではうまくいくものの、その状態を維持することにみな必死になっています。今後はリーダーの条件として、当初の目標を守りつつも、自分たちが考えて決めていく目標を形成できる力量が加わります。ISO
9001で経営者の責任が重視されたのは、当然の流れなのかもしれません。
「真実の瞬間」の最後は、一つのエピソードで締めくられます。二人の石切り職人の話です。石切り場で大理石を切り出している二人の石切り職人に、あなたは何をしているのかと質問しました。最初の職人は「見ての通りさ、言われた通りに指示された寸法の石を切っているだけだよ」とぶっきらぼうに答えました。別な職人は「今、俺の切っているこの石は、この町に建つ大聖堂の壁の一部になるんだよ。俺はその大聖堂を作る仕事をしているのさ」と目を輝かせて答えました。後者には仕事に対する、明確なビジョンがありました。
顧客に喜ばれる製品を提供するということは、単に良い製品を作ることではないと思います。
その製品を、お客様に使っていただき、それによりお客様の業績に貢献する、そして社会に貢献するということであるはずです。「顧客満足」「CS」「ブランド・エクィティ」などの浮ついた言葉だけでなく、「後工程はお客様」という固い決意が、すべての問題を解決します。
ISO川柳
望むのは 文句を言わない 客と妻
(匿名希望)

満足を 確かめたいときには 客は無し
(無職是空客)

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