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プレス技術連載第18回
Q. 不良の回収
ISOの品質管理責任者として2年経ちましたが、顧客からのクレームが根絶できずに悩んでいます。社長は同族企業の3代目として入社してきたのですが、所謂苦労というものを知らず、売上げが上がっていれば顧客対応や品質管理には、あまり熱心では有りません。
先月、製品に組み込んだ購入部品に、軽微な不良が判明した一件がありました。すでに得意先に出荷済みで、一部は市場に流出している恐れもありました。得意先に至急連絡を入れて、回収をするよう上司に進言したのですが、社長はじめ幹部の人たちの結論が出ないのです。「ウチの責任ではない」、「回収の費用はどうする?」、「そのまま使用しても大丈夫だろう」とグズグズ1ヶ月が経過し、結局得意先からクレームを受け、処理費用を請求されました。もっと早く処置を決めていればと思うと、残念でなりません。


藍田良雄: 
ISO9001:2000年版には、「8.3 不適合製品の管理」の項目があります。「組織は製品要求事項に適合しない・・・次のいずれかの方法で、不適合品の管理をすること。a〕発見された不適合を除去するための処置を取る。・・・とあります。
「クレームへの対応」
 この"不適合製品"に対しては、どんな業種の企業であっても、顧客からクレームが発信されます。ISOでは不適合製品へのクレームに対して「8.5.2 是正処置」という項目で対応しなければなりません。規定では「組織は再発防止のため、不適合品の原因を除去する処置をとること。是正処置は、発見された不適合の持つ影響に見合うものであること。次の事項に関する要求事項を規定するために"文書化された手順"を確立すること。a.不適合(顧客からの苦情を含む)内容の確認 b.不適合の原因の特定 c.不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価 d.必要な処置の決定及び実施 ・・・」となっています。ISO9001の認証企業では "自社の品質"を満たしていない不適合製品に対しても是正処置を執らなければならないマネジメントシステムのはずです。しかし、一般的な企業のクレーム対応を見ると、「臭いものには蓋」という諺の言葉通りのことが行われてはいないでしょうか。
 クレーム問題から目を逸らし、隠蔽することで、表面的には小康状態を保ちますが、そのかわり問題の本質は隔絶され、解決に長引けば最終的には顧客から引導を渡されます。
 口うるさくクレームを言ってくる取引先は、品質担当者にとっては胃の痛くなる嫌な相手です。ISO9001を取得した企業には、今まで以上に厳しい苦言が呈されることもあります。実際にクレーム数をカウントしてみると、ISOを取得した後の方がクレームの数が増えたと言う企業も多いのです。ところが顧客側の声を聴くと、クレームに対する納入企業の対応を見ながら評価をしている様子が窺えます。これからも取引を続けようと思う企業には、「同じ業者のA社には、苦情を言っても反応が無いから、諦めて何にも言わないけど、"あんたんとこ"とは、これからもずっと付き合っていきたい。だからこんなふうに"口"を尖らすんだ」というのだそうです。
確かに、クレームを出すにも手間と時間がかかります。不良製品を出した企業に希望も見所も無ければ、取引を止めて二度と発注しなければすむことです。顧客が本気でクレームを言ってくる内は、未だ自社の製品が多少の期待を持たれていると理解しましょう。
「管理能力の放棄」
 ところが日本の一流企業にも、このルールを忘れてしまった経営者や管理者がいます。そんな性格の持主は、自分自身の思考を客観する習慣を持っていないのではないかと疑われます。事故やクレームを出しながら、的確な対応を後回しにして、自己弁護に終始する姿勢を新聞やテレビの報道で見るたびに、その企業の管理体制、社会的責任の倫理観ひいては経営体質を問いたくなります。業界トップ企業の経営者でありながら、管理能力の放棄ではないかという声も聞かれます。

柄守川我留男: 顧客からのクレームを真摯に受け止めずに、争いのタネとして対応する人種が居るのだ。そんな人達のクレームの対応は、もはや喧嘩である。喧嘩というものは、理屈で始まって腕力で終わる。日頃の憤懣を独善的な抗議に訴えるような経営者や幹部がいる企業では、たとえその企業で働く個々人が良識的な一般人であったとしても、その組織には組織特有の倫理観ゆえに様々な問題が併発する。
 そして、それが良識ある人々の発言を沈黙させ、時として心ならずも企業不正に向かわせる。たとえ良心に呵責を覚えることであっても、それが会社の方針であれば、従属せざるを得ないからだ。
【組織性善説への疑問】
 最近、一流企業の事故が相次いで報道されている。自動回転ドアの事故、M自動車リコール問題等、ほとんど毎日のように報道されている。大方の企業は、組織がもつ宿命として、構造的に多くのミスを犯し易いが、奥部には今の日本の企業と組織人の道義観念を蝕んでいる危機管理意識の「構造的な弛緩」という難題が隠れている。そのような組織の倫理観は、社会的には通用しない企業倫理を"社内常識"としているに違いない。
 ところで、幹部社員と呼ばれる人達は、我が身を犠牲にしてでも、会社にとって「至善」となるよう不眠不休で汗水を流す。しかし、彼ら個人レベルの自己犠牲的努力は、それが実態だとしても、そのまま「企業性善説」を裏付けるものとはならない。組織に従属する個人が認識する「善」は、市井一般の公正基準とは必ずしも合致しないし、問題の事実が明るみに出た時、トップの介在を否定し、担当者の独善行為と申し立てることは、命懸けの私行ではあるが、その行為が企業自身の"性善さ"の証拠になるものでもないからだ。
 だからといって、手をこまねいていては、これからの社会環境は、企業がその社会的責任を全うし、一般的倫理や法令遵守を実施しない限り、消費者や投資家、国際社会が厳しい追究を緩めないのも確実だ。
【不良リスクの重さ】
 起こるかもしれない危機的状況に備え、将来にわたって、直ちにそれに対応出来る管理システムを整えておかなければならない。日常的な努力を続けることによって、直面するリスク、特に、経営上のリスクは、多くを回避・克服できるはずだ。苫小牧市の製油所やタイヤメーカーの火災事故、欠陥車問題で被害を受けた住民や交通事故を起こしたユーザーからの訴訟、株主代表訴訟、株価低迷、企業存続の危機へとリスクが拡大していく以前に、早めに対応する必要がある。Sデパート、Y食品やBSE・鶏インフルエンザ等の危機で敗北し、消えていった企業は多い。
 何れも組織として"判断力と正義"の責任意識が働く仕組みを構築していれば、回避できたものであり、不良リスクの重さを認識すべきだ。
【経営者の敢然さ】
 難問に対する果敢な姿勢、毅然とした対応が経営者には必要だ。いわば、組織における"潔さ"である。事由や原因はどうであれ、全ては自分の責任として引責し、身を処する美談の事例がある。組織が過ちを犯した場合、社長が黙ってその責任を引き受けるという処置のやり方は、古くから日本にあった武士道の精神である。しかし、こうした "短絡的潔さ"が、現実の不正を隠し、更なる悲劇の創始となる原因にもなりかねない。
 倫理法令遵守マネジメントシステムの要求事項を持ち出すまでも無いが、会社を代表して責任を取るというこの捨て石的行為は、対外的には評価されても、社内に残る問題を克服してからでないと、他人任せの無責任な組織風土を温存させる措置に過ぎなくなる。

欧木普都生: 購入品の不良問題は、厳しくなった「供給者選定」を組織が認識していないのも原因です。ISO9001の2000年版により、供給者(下請負業者)に対する評価・選定を厳しくした組織が増えています。
【供給者選定の問題点】
 この評価・選定は、取引先からの要請で自社の下請会社(2次下請)に対して実施する処置も含まれるのは当然です。ところが、下請けや購買品不良が発生しても、いいかげんな追究で闇に葬ってしまう実状も多くあるのです。本当は、かなりひどい品質状況でも、「いくら言っても一向に改善しないから」と、下請けや納入企業を放置したまま取引を続けている企業は、かなり多いのです。この機会に、再度「供給者選定」を見直して実行することをお勧めします。
社内や他の下請け企業は全員一丸となって、品質管理に取り組んでいるのに、そのような品質担当者が社内の品質成績を落とし、取引先にも悪影響を及ぼしています。このようなことで本当に良いのでしょうか?ISOの特徴は継続・維持にあるはずなのに、サーベイランスの時だけ記録を帳尻合わせしてすり抜けても、意味がありません。
「パーキンソンの法則」
 一見解決不可能に見える難問でも対人関係を巧みに調整し、事態を適格に処理できる人間がいるものです。まるで映画に登場する "交渉人"のようですが、今まではこうした技能や知識は、キャリアや感性の部類に定義され、属人的な能力と結論づけて語られるのが普遍的です。
 ところで、ISOを取得したからといって、セオリー通りに物事がうまく進むとは限りません。論理的考察を繰り返してみても、解答の方向性は組織のパワーバランスや突発的な出来事により、どんな風にでも変動します。
 現実的には超人的なヒーローの活躍ではなく、組織での地道な対応となりますが、組織の生態を分析し、組織一般にあてはまる法則を科学的?に抽出した、C.N.パーキンソンの法則が1957年に発表されています。最も有名な法則のひとつが、第一章「業務量が拡大するのは、組織の増大のためではない。むしろ、組織が拡大するがゆえに業務も増大するのである」というもの。「組織の行動特性の公式」としては、決して科学的解明とは言えないのですが、なぜかユーモラスともいえるこの法則に、おもわず頷いてしまいます。
 「仕事の量はそれに携わる人の数に比例して増える」この、仕事の有無や重要性を無視した視点は、皮肉ではありますが妙に現実的です。こうした認識に基づいて、組織の生態分析を進めると、物事を決める実務担当の数は、次第に複数の組織へと肥大化していくことになり、責任は逆比例してしだいに希薄なものになっていきます。組織が複雑になり一定以上に"責任者"がいると何も決められないのです。
【ピーターの法則】 
 また、階層社会においては、人事制度や昇進圧力により有能な人は上層へ上がっていきますが、やがて自己の能力を越えたポジションにまで到達すると職責が果たせなくなり、昇進が停まります。これを繰り返すうちに、あらゆるポジションはいずれ無能な人間で充満されるという法則です。
 一言で言うと「成熟した階層社会においては、組織は無能レベルに達した無能な人間で埋め尽くされる」という訳です。この説は、生涯人間の能力は向上しない、という前提がないと成り立たないので、そこが不完全なのですが、実際に自分の周囲を見回すと、"終着点到達"しているような人達が確実に存在しているのに気付いて不気味な思いになります。
 これらの法則は、"ミスの可能性が在るときは、ミスは必然的に発生してくるものだ"というマーフィーの法則と並び、3大ユーモア法則と言われています。こうした法則が出て来る背景には、人や組織が抱える深刻な問題を解決しなければならなかった事実があり、製品の企画設計段階や製造現場で日常的に発生するポカミス対策、仕事や組織の効率的な構築に活かされています。
 ところで、貴社の不良対策や会議はどうでしょうか、選ばれた責任者や一握りの有能なグループが存在し、適格に決定や指示を行っていれば、組織としては"とりあえず健全"です。
【管理者の資質】
 ISO9001規格の原文では、管理責任者は"5.5.2 Management representative"としています。 直訳すると、"管理代表者"、"管理代理人"となります。これをJISQ9001では"管理責任者"と訳していますが、要は、品質マネジメントシステムの統括代行責任者であり、その責任と権限として品質マネジメント
システムを確立・実施・維持し、最高経営者層に対して、そのパフォーマンスを報告し顧客要求事項を組織内の人に認識させることが求められます。当然ながら、勇気と自信と強い信念を持った責任ある決断と行動を要求される役職です。しかし、管理責任者が失敗する原因として、次のような場面も出てくるで
しょう。
 クレーム内容の認識や理解が遅い。部下に仕事を任せ切りであったり、情報収集を怠って処置決断の遅れを招いたりする。また、的確な判断力が有り、教育・訓練を受けたにも拘わらず、行動よりも知識を大切にし過ぎたり、惨めな事はしたくないという自己保身から、是正行動・実行の遅れにつながる。さらに、上層部に根回しもせず、自分の決断に自信が持てない状況で、無用な逡巡を見せ決断を遅らせる。
問題だ〜、大変だ〜と声を上げるだけで、行動を起こさず、状況が悪化すると一転して逃避する。
一番の原因は、管理責任者への権限委譲が不明朗であったり、品質管理責任者がお伺いをたてなければならない"管理者"という職に携わる人間が多すぎることではないでしょうか。
 結論的には正義感に燃え、断固として決断を下す勇気を持つ人物を、品質管理責任者として選出することですが、トップをはじめ幹部や管理者の管理能力の評価は、問題が起きた時の対応で決定的となるでしょう。
ISO川柳
不良品 有れば出せ 出せば恩赦の親心
(私報取引) 
他人事 知らずにいたら もう火の粉
(対岸のリコール)
この一個 製造原価の 数万倍
(不良対策費)

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